とんだバースデイプレゼント

「あ、いいよ。片付け俺がするから。」
「・・・は?気持ちワルッ。」
「お前の誕生日なんだから少しは素直に受けとれよ・・・。」

さっきまで幽助の家で開かれていた私の誕生日パーティー。
珍しくぼたんさんや雪菜ちゃんもお酒を飲んでいて、
誰も片付けないせいでいつも以上に幽助の部屋が汚れていた。
楽しい時間だったけれど、女性陣が酔ってしまったため、12時になる前に皆帰っていった。

「あいつら汚すだけ汚しやがって・・・。」
「人のこと言えないじゃない。」
「う。」

そのままうーうー唸りながら空き缶と燃えるゴミを器用に仕分けしていく。

そういえば、今日は幽助が珍しくあまり飲んでいない。
「ノリ悪いぞ浦飯」と言われても、逆ギレせずに、さりげなくかわしていた。

さっき言った「気持ちワル」はこれも含めてのことだった。

部屋がようやく片付いた頃、2人分のコップにお茶を入れてテーブルで向かい合う。

1月31日午後11時49分。
私の誕生日終了まで、あと少し。

目をジトー、と見て口を開く。
幽助はその視線に気づくと、不自然にキョロキョロし始めた。

「幽助。」
「・・・。」

「ゆ・う・す・け?」
「・・・・・・。」

「プレゼントは?」
「・・・・・・・・・。」

まあ、予想通り。
幽助がプレゼントを用意してるなんて思っていなかったけど。

ぼたんさん、雪菜ちゃんからのマニキュア3色。
蔵馬さん、桑原君からのバッグ。
静流さん、温子さんからのブーツ。

素敵なプレゼントを沢山もらった。


でも、少し足りないから。


「幽・・・。」
「あーっ分かったよ!ほら、コレ!」

バン!とテーブルの上に何かを置いた。
その振動でコップの中のお茶がこぼれそうになる。

幽助が手をどけると、特に分厚いわけでもない、1枚の封筒が出てきた。

「・・・まさか、手紙い?」
「ちっげーよ!」

開けてみると、中に入っていたのは折られた1枚の紙。
名前等の記入欄と、他の文字より少しだけ大きい、

「婚姻届」の文字。

「・・・え。」
「『え』じゃねえよ。」
「コレ、プレゼント?」
「た、足りねえ?」

「・・・うん。足りない。」

少し意地悪に、冗談で言ったつもりだったのに、
幽助は恥ずかしそうに後ろを向いて考え出した。

(冗談だって、伝わらなかったかな。)

「お金ないことなんて分かってるんだから。もう何もいらないわよ。」
「いや、よく考えたら、他の奴らよりもダメなモンだったかも・・・。」
「そんなことないって。」

マニキュアより、バッグより、ブーツより、ずっと素敵。
たった紙1枚だけれど、どれだけの価値があるのだろう。

「本当に、気にしな・・・。」
「あ。」
「ん?何?」
「あった。ひとつあげれるモン。」
「?」


「名字。やる。」


「・・・は?」


2,3秒の沈黙が何十分にも感じられるような雰囲気。
幽助は「やばい」という顔をして目をそらした。

「あ、あははは!」

指をさしてひとしきり大爆笑してやったら、
あんな発言をしたことへの羞恥心が今頃やってきたのか、
幽助の顔は段々と赤くなっていった。


そっか。
「浦飯螢子」・・・か。


(婚姻届より、ずっと嬉しいよ。)

幽助を見ると、照れながら自分のマフラーを腕に絡めてブツブツ何かつぶやいている。

(・・・バカね。あいつ。)

「じゃあ仕方ないから浦飯になってあげる。」
「なんだよ、『仕方ない』って。」

幽助ですら完璧に覚えていない住所や、電話番号。
喧嘩をしないうちに書いておいて、一緒に届けに行こう。


「・・・なんでニヤニヤしながら記入してんだよ。」
「別にー?」

(「浦飯螢子」も結構いいな、って思ってたんだよ。)

END


あとがき

螢子ちゃん誕生日おめでとう!
実は誕生日用にしようなんてこれっぽっちも思っていませんでしたw
書いたのは10月くらい・・・?ワカンネ。
誕生日小説が思い浮かばなくて、「そういえばこんなん書いた!」と思って(笑)

誕生日企画の続きですが、結局幽助だけがあげられるものなんてこんなもんしかないんですよね。
でも螢子ちゃんにとっては最高のプレゼントなわけです。

昔テレビで「名字をあげる、とプロポーズされた」的なことを言っていたなあとふと思い出して、
どうしても書きたくなって書いたもの。
蔵ぼにしようか、幽螢にしようか、本気で悩みました。
もし蔵ぼだったら
こんなんでした。
初め最後の1文を「3人」にしてしまって、
あれ?まさかの妊娠オチ?みたいになってました(笑)
浦飯螢子・・・いい響きです←
ちなみに、タイトルはあれです(笑)