成人式×牽制×彼氏もどき

『幽助!早くしなさい!』
「あいあ〜い。」

全く・・・成人式の日くらい早めに準備できないのかしら?
魔界に行くときはあんなに準備が早いのに。

『早くして!』
「お前、馬子にも衣装っていうか・・・豚に真珠か?」
『うるさいっ!』

振袖を着ている私に幽助がもらした憎まれ口。
照れ隠しって分かってるから、いいけど。

私達は相も変わらず、「幼馴染」。
いや、とっくに幼馴染以上のことはしてると思うのだけど・・・。
まあ、さすがに18で結婚は無理だった、ってだけかしら?
半同棲のような状態だけど、結構満足している自分がいるから。


市民会館につくと、もうほとんどの人たちは席についていて、
私達も急いでそれぞれの席へと向かった。

市長の長い話を聞きに来ているんじゃない。
当たり前だが皆、この後の「プチ同窓会」が目当てなのだ。


「螢子ー!?」
「きゃー!きれー!」
『久しぶり!』

外に出ると、中学校の同級生との昔話に花が咲く。
幽助は駐車場の隅っこでタバコを吸って私を待っていた。

「皆相変わらずだな。」

ふいに聞こえた、低い、懐かしい声。

『・・・竹中先生!』
「竹中先生ー!お久しぶりです!」

3年生の時の担任、竹中先生。
私も幽助も随分お世話になった。
特に幽助なんて、卒業させて「もらった」のに。
恥ずかしがってこっちに来ない。

「浦飯!恥ずかしがってないでこっちに来んか!」

先生が大きな声で叫ぶと幽助は肩をびくっとさせた。
皆は、タバコを吸うその人が幽助だと気づいていなかったみたいで、
幽助だと気づいた途端に静かになった。

「え・・・あれ浦飯幽助・・・?」
「浦飯君なんか落ち着いた雰囲気になったね。意外〜。」
「結構格好よくない!?」

皆が小さな声で会話を始める。

『幽助!さっさと来なさいよ!』
「いててて!」

女の子の会話が気になりつつも、幽助の耳を引っ張ってきた。
皆から笑いが漏れる。

「雪村さんって相変わらず怖いもの知らずなんだね。
中学のときもそうやってたよね、毎日。」
『梅田君。そうかしら・・・?』

話しかけてきたのは同級生だった梅田君。
相変わらず幽助とは比べ物にならないくらい爽やかだなあ・・・。

そういえばあの頃は屋上でサボる幽助を教室に連れてくるのが日課だった。
そう、あの日までは。

幽助は嫌々桑原君の元へ向かう。
私はそのまま梅田君と話を続けていた。

「ところで雪村さん、彼氏いる?」
『・・・か、彼氏?』

あ、幽助がこっち見てる。
相変わらず耳がいいんだから・・・。
と思ったら、幽助だけでなく、皆もこっちを見ていた。

『・・・知らない。いないんじゃない?』

だって彼氏じゃないもの。ふんだ。

不機嫌そうにこっちを見ている幽助と、それを見て爆笑している桑原君が視界に入った。

「じゃあ俺立候補していい?」
『・・・へ?』

私の手を握って突拍子なことを言い出した。

キャー!と女子の歓声があがる。
ああ、そういうこと。
さっきの質問はこの本題のための布石だったわけね。

『えっと、梅田君。私ね・・・。』
「螢子。帰るぞ。」
『え?』

彼氏じゃないけど、婚約者みたいなよくわかんないくされ縁の幼馴染がいるから遠慮しとくわ。
と、明らかに幽助を表した断り文句を入れようとしたとき。
その本人が声を掛けた。

不機嫌丸出しの声で、梅田君の手を払う。

『え?何で?』
「何でも!」

あ、やっぱり怒ってる・・・。
勢いよく手を握って、歩き出したと思ったら振り返って、皆の方を向いて一言。

「ワリーな梅田。彼氏じゃないけどコイツには俺がいるもんで。」

さっきより一際耳が痛くなる歓声を聞きながら2人で歩いて帰った。
道中、何であんなことするのよ、バレちゃったじゃないの、最低よ、と罵詈雑言を浴びせたのに、
幽助は逆に嬉しそうな顔をしていた。

―――――――――――――

「・・・螢子、浦飯君だったの・・・。」
「そっか・・・うん、そっか・・・。」

後から聞いた話だけれど、呆れた夏子達(梅田君含む)に桑原君がこう言ったらしい。

『女神様に触れたら怒られるだろ?』

END


あとがき

むつみさんの「同窓会」みたいなのにあこがれたんですが、
無理でした/(^O^)\ナンテコッタイ
しかも梅田君不要ですね。ほんとゴメン(笑)
オリキャラを踏み台にしてCP要素を際立たせるのが大好きです!死
ちなみにポイントは「幼馴染以上のこと」です(分かりづらっ)
ハンター風タイトルでお送りしました。