恋した記念日。


彼は、単純バカで、突拍子な鈍感男だ。


「俺さあ、螢子のこと好きみたい。」

「は?」

それは仕事休みの日曜日のこと。
俺の友人、浦飯幽助と我が家で話しているときだった。

「いや、だから、俺螢子のこと好きなんだよ。」
「知ってるよ。ってか、今さら?」
「え!?なんで知ってるんだ!?」

なんで、と聞かれても。
え、まさか君自覚なかったんですか?と問いたくなる。
というより、何からつっこんで良いのやら。

「幽助プロポーズとかしてたじゃないですか。
好きでもないのにプロポーズしたんですか?」
「いや、そーじゃねえんだよ。
俺の中で螢子は螢子でさ。好きな人だ〜とか意識せずに言ってたから。」

ああ、そういうことか。
彼はこれまでその感情が「愛」であると知らなかったのか。
これは、良いからかいネタだ。

「で、それがどうしたんですか?」
「や〜それがさ〜、自覚した途端目を見て話せなくなってさ。
戸惑ってたら『また魔界に行くの?』とか言われて怒られたんだよ。」
「ほうほう。」
「どうしたらいいんかなあ?」

「では、援軍を呼びましょうか。」

「え?;」

―――十分後―――

ピンポーン

「「「お邪魔しまーす!」」」

「どうぞ、入ってください。」

援軍とは名ばかりの女性達、ぼたん、静流さん、温子さんが入ってきたのを目にすると、
幽助は渋い顔をした。

「なんだい幽助、相談って?」
「このお母様に話しなさい!」
「温子さん、嬉しそうだね。」
「ほら幽助、さっきの相談事、話してみたら?」
「う・・・。」

やはりこの人たちには話しづらいのだろう。
幽助は耳を真っ赤にして俯いている。

「じゃあ俺が代わりに言うよ。
幽助が今さら螢子ちゃんへの恋心に気づいたんですよ。」
「「「え?今さら?」」」
「なんでおめえら蔵馬と同じ反応なんだよ・・・。」

さて、ここからは俺が口を挟む必要はなくなる。
悪いけど、第三者として傍観させてもらうよ。
3人に質問攻めにされてどうしたらいいのか理解できていない戦友を横目にお茶菓子のクッキーを口に運ぶ。

ぼたん「これまで気づかずに生きてきたって、すばらしい才能だねえ〜。」
静流「ぼたんちゃんほめてるのけなしてるの?」
温子「ああ、だからさっき螢子ちゃん泣きそうな顔して歩いてたのね。」
幽助「え!?泣いてた!?」
温子「何したの?」
幽助「いや、目を見て話せなくなって、さ・・・。」
ぼたん「バカじゃないのかい!?」
温子「さっさと謝りなさい!!」

「いや、でもあいつが俺のこと好きかなんて分からないんだし。
何謝ったらいいんだ?」

一瞬、その場の空気が止まったように感じた。
そして次の瞬間。

「「「「はあ〜・・・。」」」」

俺を含め、4人が同時にため息をついた。

「ここまで鈍感だと、いっそ気持ちいいさね。」
「そうですね。」

ぼたんに相槌をうつと同時に、玄関の前のある人物に気がついた。
・・・内容を聞いていたのだろうか?
入ってくるのをためらっている。
どこぞやの鈍感男は未だにそれに気づいていない。

「幽助。そろそろ屋台を出す時間じゃないですか?」
「あ?おお、・・・そうだな。」
「相談の続きはまた今度でいい?」
「ああ、今日はありがとうな。」

ガチャ・・・

幽助が扉を開ける音がする。

「・・・誰が呼んだんですか?」
「私だよ。」
「静流さん。さっきの質問攻めのときですか?」
「うん、そのほうがいいんじゃないかな、と思ってね。」

バタン

扉が、閉まった 途端

「うわああああああああ!!??」

先ほどまで部屋にいた単純バカの叫び声がする。
4人で笑いをこらえながら、扉に耳を当てた。

「け、螢子!?何でいる・・・っていうか何で泣いてるんだよ!?」
「・・・らない。」
「え?」
「もういい!幽助なんて知らない!」
「は!?」
「今まで私がどんな想いしてたか知らないで!またどうせ魔界に行くんでしょう!?」
「違えよ!」
「じゃあ何よ!後ろめたいことでもあるんでしょ?」
「それも違えよ!」
「じゃあもう何よお〜・・・。」

螢子ちゃんは泣きすぎて何も言えなくなってしまった。

ああ、此処に飛影がいたなら。
声だけでなく2人の表情も分かったのに。

「・・・螢子。」
「・・・っ・・・。」
「聞けって、螢子。」
「・・・やだ。」
「だからさあ。」
「言い訳なんていらない。」

プチッ

「あのなあ!俺はお前が好きなの!
だから目を見て話せなかったの!
それくらいの理由聞けよ!ゴリラメス!」

「・・・え?」

そこに「ゴリラメス」は必要なのだろうか。
4人共笑う寸前で、ぼたんと温子さんは目に涙をためている(面白すぎて)

きっと、今彼の顔は真っ赤だろう。

「幽助、・・・今、なんて?」

「だから、俺は・・・って、け、螢子?」
「私も好きよ、大好き。幽助。」

しばしの沈黙。
するとそこに、なんともいいタイミングである男が現れた。

「不純異性行為はんたァ―――――い!!」

ああ、桑原君、どうして君はこうもタイミングがいいのだろう。
いい雰囲気の場面に丁度現れるなんて!
そして彼の一声によって、4人がついに堪えきれずに吹き出した。

「「「「あーっはっはっは!!」」」」

その勢いで扉を開けると、抱き合って、顔を真っ赤にしている幽助と螢子ちゃんが突っ立っていた。

「和、あんたほんとタイミングいいね。」

腹を抱えながら桑原君を指差している静流さんとは対象的に、怒りに燃える男が1人。

「く〜わばらァアァア〜・・・。」
「うわあああああ!!」

あっという間にボコボコにされた桑原君。

目も顔も赤くした螢子ちゃんは出歯亀3人に質問攻めにされても、笑っていた。


事情も知らずにボコボコにされた桑原君には悪いけれど、これにて一件落着。
すがすがしい気分で空を仰ぐと、木の上からこちらを見ている邪眼師が1人居た。

END


あとがき

だめです・・・。
ドタバタオールキャラギャグは難しいです・・・。
援軍は雪菜ちゃんも加えようと思ったんですが、
どうも話しに絡められなかったので、3人にしました。
静流さんも無理やりでしたが・・・。
桑原は蔵馬に勉強を教えてもらうために来たのだと思ってください(苦)
ってゆーか文才ねえなあオイ。