今日も、快晴。

机を並べていられたあの頃に戻りたいとは思わないけれど、時々、ほんの少しだけ寂しくなる。

何の気なしについて来た図書館で机に突っ伏し、幽助は隣りに座る恋人を見上げた。
唇にペンを押し当てテキストを読む癖は相変わらず。
集中している横顔は凛としていて、なんだか置いてけぼりを食らった気分になる。



優等生と不良。
学生と社会人。
女と男。
―――人間と、魔族。



普段は気にもしない事柄が泡のように浮かんでは消える。
何から何まで違うことばかり。
ただでさえ少ない共通点がさらに減っていることに今さら気付く。

いつから、いつの間に、互いを取り巻く環境が変わってしまったのだろう。
それは少し苦くて切なくて、どこか寂しくて。



「…なぁ」
幽助が掠れた声を螢子に投げる。
「なに?」
「『好き』って言って」
「は?…何よ、いきなり」
「いいから、俺のこと『好き』って言って」
「………」
「なんだよ冷てェなー。そーか、そんなに俺のこと嫌いか」

不貞腐れてみせる幽助にジト目をくれた後、螢子はぽつりと呟いた。



「好きか嫌いかでいったら…好きよ」



かっわいくねー。
ぷいっと顔をそらした彼が一瞬見せた紅い頬とほっとしたような声色に、彼女は気付かないフリをした。



答えのない不安も寂しさも、一瞬で吹き飛ばす彼女の言葉は素直ではない。
けれど、それを受け止めて素直に尻尾を触れる僕は、彼女と一番お似合いだ。

窓の外に広がる青空をぼんやりと眺めながら、幽助は柄にもなくそんなことを考えた。



隣にいても、いいですか? 20081119


鳥遊飛鳥さんのサイト「SONG FILE」様のフリー小説ですv
「好きか嫌いで言ったら好き」という言い方が螢子らしくて超かわいいです←
いろんな違いがあるってやっぱ悲しいんでしょうかね。
でも結局「好き」という言葉の前ではそんな「差」って無力な気がします。
あ、幽助と螢子の場合で、ですよ(笑)