双子が、生まれた。
男と女の、双子。
幽助は、私の隣で嬉しそうにしゃべっている。
「ああ、名前決めねーとなー。」
「そうね。」
「俺さ、ちょっと考えたんだよ。」
「どんな名前だか予想つくわ。」
「あ!?なんだそれ。じゃあ、せーので言うぞ!男、女の順番で。」
「いいわよ。」
「せーの!」
「「螢助と幽子!」」
・・・やっぱり。
「なんで分かったんだ!?」
「あんたの軽い頭で考えれることなんてその程度だって分かってるわよ。」
「何ィ!?」
「親の名前一文字ずつ取るのもいいけれど、もうちょっと考えましょ?」
「・・・分かったよ。」
幽助は明らかに不機嫌そうな顔で病室を出ようとした。
その時。
ゴッ!
まるで漫画の効果音のような音が扉のほうから聞こえてきた。
「あれ?幽助。いたんですか。すみません。」
「螢子ちゃーん!おめでとう!」
「ぼたんさん!ありがとうございます!」
なんとなく病室を出るタイミングを逃してしまった幽助はバツが悪そうにイスに座った。
「姓名判断の本・・・ですか。そうですね、名前も決めないと。
幽助なら『螢助と幽子がいい』なんて言いそうですね。」
「なんで分かるんだ!?」
「やっぱりそうなのか?」
驚く幽助と、それをからかう蔵馬さんを横目に、ぼたんさんと話をしていた。
「それにしても可愛いやね。」
「ありがとう。」
「幽助に似ないといいけどねえ・・・。」
「あはは、でも男の子のほうはなんとなく似てない?」
「将来が心配さね・・・。」
ゴッ!
さっき幽助が扉で頭を打ったときと同じような音がぼたんさんの頭から聞こえた。
「おいコラぼたん!何言ってやがんだ!」
「いったー!殴ることないじゃないのさ!」
「幽助・・・?」
「ゲッ蔵馬!わりいわりい!」
「ローズウィッ・・・。」
「落ち着いてー!!」
蔵馬さんは随分変わったなあ・・・。
別に昔の彼を幽助ほど知っているわけではないけれど、少し雰囲気がやわらかくなった。
今も、こうしてぼたんさんのために怒っているし。
ああ、―――平和だなあ。
窓から少し雲の浮かぶ空を見て、左で眠る小さな命を見つめる。
騒ぐ大人たちの声に気づきもせず、寝息をたてている。
「・・・何笑ってんだよ、螢子。」
ようやく乱闘を終えたのか、元幼馴染の現旦那が戻ってきた。
顔には何やら物騒な傷ができている。
数分前には一切なかった傷。
相変わらず、私はこいつの血と寝顔を見ることが多いみたい。
「別に?・・・何よその傷。」
「どこかの長髪鬼畜男にしばかれた。」
「・・・後ろ気をつけたほうがいいわよ?」
幽助の後ろにはにこやかに微笑む蔵馬さんとぼたんさん。
また何かやらかしたのだろうか?
さっきとは違う怒りみたい。
「・・・あんなお父さんでごめんね?」
小さく呟くと、2人は笑った気がした。
気のせいかしら?
「はじめまして。これからよろしくね?」
「何独り言呟いてんだよ?」
「挨拶してたのよ。」
「そっか。よろしくな、俺が親父だぞ!」
「・・・多分、分かってるわよ。」
小さな手のひらに触れて、2人はもう一度微笑んだ。
―――はじめまして、生まれてきてくれてありがとう。
END
あとがき
ギャグ路線の予定が全然変わってしまいました(笑)
名前は、女の子は「蛍」(ほたる)
男の子は、「晃助」(こうすけ)か「海斗」(かいと)がいいなあとか考えてみたり。
ちなみに「美味し●ぼ」にかなり影響されています(笑)
初めて読んだ巻が、75巻だったので・・・。
ちなみに双子設定はこの小説だけの予定です。