逆転?家庭教師

「幽助、ちゃんと問題解いて。」
「わーってるよー。」

そう言って幽助は口にシャーペンをくわえて、
半ば投げやりに数学の問題に目を向けた。

「落ちたくないでしょ?」
「そうだけどよー。」

幽助の3歳年上の幼馴染、雪村螢子は、
家庭教師のアルバイトで幽助に勉強を教えている。

ただ、これは相当根気の要る仕事で、
勉強する気のない幽助に螢子はほとほと手を焼いているのだった。
それでも、そんな幽助の世話を見ることができるのは実際螢子くらいなもの。
「仕方ない」。その言葉でいつも面倒を見てしまうのだ。

「ねー螢子せんせー。」
「何?気持ち悪い呼び方。」

螢子は先ほど幽助が解いた解答用紙から目を離さずに返事をする。

「あのさー。」
「はい、問い3間違ってる。」
「ねえってばー。」
「早く解きなおし!」

「螢子先生好きな人とかいんの?」

バサッ!

突如螢子の手の中から参考書が滑り落ち、
幽助はそれをカブトムシを見つけた小学生のように笑って見ていた。

あーあ。
動揺してら。

そんなことを考えながら、幽助は「いいことを思いついた」。

「な、何いきなり・・・!」
「んー、いるの?いないの?」
「べ、別に・・・。」
「あ、その顔じゃいねーな?」

ニヤリ、と笑う3歳年下の幼馴染の表情は、
少年のようで、やはりしっかりとした「高校生」の笑みだった。

「いねーなら、俺が狙ってもいいわけだ?よっしゃ、待ってろよー?」

「は、・・・は?」

さっきまでの嫌そうな表情とはうって変わって、幽助は楽しそうに問題に取り組む。
「絶対合格してやる!」とまで口走り始めた。

これはいいことなのか悪いことなのか。
螢子は判断しかねていた。

(いないなんて、一言も言っていないのに。
まったく・・・3歳も年下の、ガキンチョのくせして。)

そんなことを考えていると、幽助はいつもの何倍もの速さで問題を解き、
嬉しそうに螢子に見せてきた。

「・・・合ってる。」
「へへっ!やりい!」

『やればできる』。
普段からきちんとやっていればこんな言葉は無意味なのだから、
それを主張しても格好いいことではない。

しかし、幽助の顔をチラ見した螢子の目にうつったのは、
明らかに「ごほうび」を欲しがっている幽助の澄み切った眼差しであった。

「全く・・・やればできるじゃない。」
「センセ、ごほうびちょーだいっ♪」
「はいはい、後でね。じゃあ次問い4の2番。」

てっきり何か「ごほうび」がもらえると思っていた幽助は、
自分が(実際そうではないが)いいところを見せたのに変わらない螢子の態度が気に入らなかった。

そもそも幽助は、たった5年前までは化粧もしてないような女子高生だったのに、
長い髪を肩の下まで下ろして、化粧までして、「サークル」の話ばかりする螢子を近頃、
「幼馴染」よりも遠く感じていた。

(なんだよ。いっちょまえに色気づきやがって。)

むっとして、足りない頭で考えて、いい案を思いつく。
俺って天才、と頭の中だけで褒めておいて、作戦実行に至るのはさながら中学生のようだ。

「ねえ先生、メガネ、邪魔じゃない?」

素早く螢子のメガネに手を添えてヒョイと奪い取る。
外す瞬間に触れた髪の毛がやたら細くて、思わず心臓がドクン、と鳴る。

「あっ、コラ・・・返しなさい!」
「へっへーんだ!嫌だよーだ!」
「この悪ガキー!」

螢子は怒り任せに手を伸ばしてみるも、幽助が素早くメガネを上へ下へと移動させるため、
一向にメガネを取り返すことができなかった。

「もー・・・わかった。ごほうびあげるから、返して?」
「ダメ。返さない。」

螢子ははあ、とためいきをついてさらに一歩譲る。
幽助は本日一番の笑顔で私のメガネを見ていた。

「何したら返してくれる?」
「・・・そんなに返して欲しい?」
「そりゃ、文字見えないし・・・。」


「じゃー返して欲しかったら、キス、して?」


螢子の目が一瞬点になる。
幽助は自分の唇をトントンと指差して、優位に立ったような表情で螢子を見た。

「な・・・なっ・・・。」

口をパクパクさせる螢子を見て、幽助は思わず口に手を当てて笑い出す。

「はい、して?」
「で、できるわけないでしょっ!」

「じゃあ、俺から、していい?」

え、と小さな声が聞こえると同時に、無理やり唇を押し付ける。

「ん・・・ふっ。」

螢子は、自分の顔が熱くなっていくにつれ、
この「幼馴染のガキンチョ」をどう思っているのか分からなくなった。
でもゆっくりと「確実な形」となりつつあるのをぼんやりと感じていた。

「・・・螢子せんせー?顔、真っ赤。」

螢子は恥ずかしくなって自分のセーターで顔を隠したが、
勿論そんなことをしても幽助はとっくにその「女の顔」を見た後だった。

「・・・はい、じゃあごほうびはこの続きで。」
「え!?今のがごほうびじゃないの!?」

(これで解放されると思ったのに・・・!)

びっくりしている螢子をぎゅう、と抱きしめて螢子に見られないようにニンマリと笑った。

「違うよーっ。まあ今おふくろいないし、いいよね。」

「何がいいのよ、バカー!」


後日、幽助は「ごほうび」の雪村螢子をいただいたおかげで、
無事大学に合格したとのこと。


END


あとがき

生まれて初めて、年齢設定を丸々変えてしまいました・・・!
これってパラレルというのでしょうか;
ルアン様宅の絵チャで生まれた妄想小説(笑)
セリフは実際にみんなでしゃべっていたものをほとんど使いましたw
幽助年下設定、たーのしー!
ルアン様とみね様が合作を描いている間、せっせと書いておりました(笑)
妄想の段階ではすごくうきうきしていたのに、
いざ書くとなると難しくて、苦戦しまくりでした(汗)
こんなモノになってしまってすみません(土下座)
「年下で、幼馴染なんだから・・・!///」とか考える螢子が好き←

ちなみに、ルアン様とみね様の合作絵は
こちら
バカ男⇒ルアン様、女神⇒みね様です。
絵茶に参加された方々は、お持ち帰りくださいv