いつも女神。-バカとことわざ-
「・・・桑原君。こんなんで合格する気だったの・・・?」
「だってよお!ことわざなんて知るわけねえだろ!?」
桑原和真、高校3年の夏。
ただいま浦飯宅(マンション)にて家庭教師南野氏と勉強中。
「大学受験するのに『義を見てせざるは勇無きなり』も知らないなんて・・・。」
「聞いたこともねえよ!」
次はどんな問題をこのお馬鹿さんに出そうか、
「ことわざ辞典」をパラパラとめくりながら蔵馬はうんうん唸っている。
テーブルで必死に勉強を教わる桑原を横目に、女性陣はゆったりと座敷でくつろいでいた。
「桑ちゃん、バカだねえ。」
「和真、いっそ死んで生まれ変われば頭よくなるんじゃない?」
「和真さん、頑張ってください!」
かける声も三者三様である。
唯一桑原に野次を飛ばさない螢子も、幽助にはブツブツを小言を並べていた。
「あんたも勉強したら?」
『意味ねえじゃん。』
「一般教養として、よ。」
ヘイヘイと生返事で対応する幽助の目線はテレビの画面に釘付け。
新しく買ったゲームに夢中で、2人が勉強していようがいまいが、関係ないのだ。
「じゃあ、次の問題。」
「来い!」
さっきから一問も答えられていないのに、桑原は意気揚々として蔵馬が出題するのを待っている。
蔵馬はふう、とため息をついて低いトーンで問題を出した。
「・・・美人を表す言葉。」
「雪菜さん!」
「ちゃんと最後まで聞いて!」
悪い、と体を小さくする桑原を見て、皆が心の中で笑った。
「立てば4文字座れば3文字歩く姿は5文字。」
「立てば雪村、座ればぼたん、歩く姿はゆっきなさーん!!!!」
今度は女性陣が声を出して笑った。
静流だけは怒っていた。
「和真ッ!なんで私が入ってないんだいっ!」
即答した桑原に対して理不尽な拳をぶつける静流を見て、ついに蔵馬も笑ってしまった。
が、すぐに自分も怒るべきだということに気付いた。
「静流さん、そういう問題じゃありません。
桑原君、真ん中しか合ってないじゃないか・・・!」
「え?そうなの?」
蔵馬は泣きたくなった。
補欠とはいえ、仮にも骸工大付生。
自分の教え方が悪いのかと、少々自己嫌悪に陥った。
「でも蔵馬あー、あたしもそれ知らないよ?」
ぼたんの発した一言でさらにショックを受ける。
追い討ちをかけられた蔵馬は泣きたいを通り越してなぜか情けなくなった。
自分の中の常識は、このメンバーといるといとも簡単に覆されてしまうのだ。
「んで、答えは?」
「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花!」
「そんな怒るなよ〜浦飯だって知らないぜ?」
「幽助が知らないのなんて当たり前でしょう!」
『なんだと!?』
蔵馬がびっくりして振り向くと、画面をポーズ状態にしてものすごい形相でこちらを見ている幽助がいた。
「幽助」という単語が耳に入ってきたから、「バカにされた」と思って振り向いたのだ。
「幽助、『立てば4文字座れば3文字歩く姿は5文字』っていうことわざ分かる?」
蔵馬は4本、3本、5本、と指でも字数を示して幽助に出題してみた。
答えられるとはちっとも思っていない。
そして勿論、彼は期待を裏切らない男だ。
『立てば短足座れば胴長歩く姿はダックスフンド。』
「・・・なんで私を見て言うのよ!」
ピン、とデコピンが幽助の額に当たった。
静流と桑原はそんなことをする螢子を、密かに可愛いなあと思った。
そんなほのぼのと和んでいるギャラリーをよそに、幽助と螢子はいつものような言い合いを始めた。
ギャラリーはそんな光景にもう慣れてしまったので、
熟年夫婦の喧嘩、もしくは子犬のじゃれ合い程度にしか思っていない。
「・・・構いたくて仕方がねえんだな、浦飯・・・。」
「そんなの皆知ってるさね。」
お前みたいなブスダックスフンドで十分だ、だの何だの、
幽助の精一杯の愛情表現が皆にとっては面白くて仕方がなかった。
蔵馬と桑原が笑いながら言った。
「まあ、幽助にとっては、立ってても座ってても歩いてても・・・。」
「雪村螢子、だからなあ。」
「そんなのも皆知っているさね。」
ぼたんも笑いながら言った。
END
あとがき
立てば女神様座れば女神様歩く姿は女神様ってね!
幽助にとっての美人の代名詞が「雪村螢子」だと思うんですよね・・・。
というかそうだったらいいなーって妄想^q^←
静流さんと雪菜ちゃんの意味がねえwww
そして蔵馬がやたらネガティブでウザイ(笑)
ちなみに、幽助のことわざは「学校のおもしろい話」みたいなのからインスパイヤしました。←